米鉄鋼労組会長､日鉄のUSスチール買収巡り｢大統領の方針転換に失望」

【ヒューストン=大平祐嗣】日本製鉄のUSスチール買収について、全米鉄鋼労働組合（USW）のデービッド・マッコール会長は15日、「1年以上にわたり反対表明してきた大統領の方針転換に失望している」との声明を出した。トランプ米大統領が13日の大統領令で前政権が出した中止命令を修正し、日鉄の買収計画が完了へと進展したことを受けた。

マッコール氏は声明でUSWがまだ日鉄と米政府で交わされた合意文書を受け取っていないとしたうえで「おそらくUSS（USスチール）のロゴは残るが、日本企業の所有する非公開子会社が『アメリカン』と呼ばれる煙幕に過ぎないようだ」と記した。

USスチールとUSWの間で結ぶ労働協約は2026年9月に失効する。それ以後の新たな協約について「新オーナーに働きかけて既存施設の維持と、組合員による数十年の貢献を認める公正な協約を得る」と早くも日鉄との労働協約の交渉に意欲を示した。

その上で「日鉄が『鉄壁』だと主張した投資に関する約束を守らせる。組合員の雇用保障、年金、退職者保険などがそのまま維持されるように闘う」と強調した。

USWの会長は日鉄が買収計画を23年12月に発表した直後に買収反対を表明した。米大統領選を前に「米国史上最も組合寄りの大統領」と自認したバイデン大統領を動かし、日鉄の買収計画を政治問題化する一因となった。トランプ氏も買収に反対の意向を示してきた。

日本経済新聞　2025年6月16日 4:57
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN153650V10C25A6000000/