【京都】「物静かで優しい子だった」　市営住宅２４歳女性刺殺事件、７階の部屋は「密室」状態　京都府警、目撃情報探す

山村さんが遺体で見つかった市営住宅の階段付近を調べる捜査員＝京都市下京区で2020年10月12日午後0時43分、川平愛撮影

　京都市下京区の市営住宅の一室で住人のアルバイト、山村留美乃さん（24）が刺殺された事件は、遺体発見から26日で半月を迎えた。遺体には首や胸などに10カ所を超す刺し傷があり、強い殺意がうかがえる。現場の部屋の玄関は施錠され財布も残されており、京都府警は知人による犯行の可能性も視野に捜査している。一人暮らしの「密室」での凶行に、地元では衝撃が広がっている。【中島怜子、千葉紀和】

　◇「物静かで優しい子だった」

　「物静かで優しい子だった。こんなことになるなんて犯人は許せない」。山村さんを子どもの頃から知るという男性は、悲惨な事件に怒りをにじませた。

　亡くなった山村さんは、同市下京区にある有名キャラクターグッズ販売店に勤務。10、11の両日は出勤日だったが、姿を見せなかった。無断欠勤はこれまでなく、不審に思った勤務先から連絡を受けた山村さんの親族が11日午後2時ごろ、市営住宅の部屋を訪ね、事件が判明した。

　府警の発表によると、親族が合鍵で部屋に入ると、山村さんが寝室の布団の上で血まみれになり、あおむけで倒れていた。山村さんは10階建て市営住宅の7階で一人暮らし。部屋は3LDKで、寝室以外の部屋からも血痕が発見された。発見時はTシャツに短パン姿で、着衣に乱れはなかった。凶器は確認されていないと説明している。

　捜査関係者によると、司法解剖の結果、死因は胸を刺された際に血液が心臓を圧迫する「心タンポナーデ」だった。死亡したのは9日夜と推定され、心臓に達するほど深い傷や、身を守ろうと抵抗した際に手にできる防御創とみられる傷があったという。背中にも複数の傷があり、逃げようとした山村さんを何者かが背後から執拗（しつよう）に襲ったとみられる。

　また、親族が部屋を訪ねた際、寝室も含め各部屋の電気は消えていた。殺害現場とみられる寝室の扉も閉まっていたという。犯人は逃げる前に消灯し、扉を閉め、玄関も施錠してから逃走した可能性がある。ベランダ側の窓は施錠されていなかったが、7階で窓から逃げた形跡も見られず「密室」状態だった。

　◇付近に防犯カメラ少なく

　府警は殺人事件と断定し、12日に捜査本部を下京署に設置。捜査員62人態勢で、山村さんの交友関係などの捜査を始めた。山村さんは5日夕までバイト先に勤務しており、その後に誰と会ったかなど「空白の4日間」の行動確認を進めている。

　現場検証では、市営住宅の廊下や階段などから血痕は見つからなかった。室内には山村さんの財布が残されていた一方、自宅のカギと山村さんのスマートフォンがないことが確認された。捜査本部は容疑者が殺害後に山村さんの鍵を用いて施錠し、持ち去った可能性が高いとみている。

　ただ、現場の市営住宅は防犯カメラがほとんど設置されておらず、府警は不審な目撃情報などを探している。ストーカー被害などトラブルの相談についても、府警は把握していないという。

　現場はJR京都駅から東に約500メートルにある、市営住宅が建ち並ぶ地域。市によると、事件があった市営住宅は2019年9月に完成し、同年暮れに入居が始まった。山村さんは家族と同居していたが、20年5月ごろから一人暮らしになったとみられる。

　現場近くに住み、妹が山村さんと同級生で昔から知っているという若い女性は「かわいい子だった。こんな事件に巻き込まれるなんて……」と声を詰まらせた。近くに住む高齢男性は「ひどい殺し方で怖い。早く解決してほしい」と話した。

10/26(月) 16:06配信
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