【世良光弘】 極音速兵器を迎撃する新型ミサイル、日米が共同開発との報道…「抑止力で対応するのが現実的」

岸田文雄首相は１８日、米国でジョー・バイデン米大統領との日米首脳会談に臨む。
中国やロシア、北朝鮮が「極超音速ミサイル」など、探知困難な兵器の開発を加速させるなか、
日米両国でこれらを迎撃する新型ミサイルの共同開発をする方針で合意する見通しという。ＮＨＫなど複数メディアが報じた。
安全保障環境が急激に悪化するなか、技術面やコスト面、開発時間などを踏まえて、現実味があるのか。

極超音速ミサイルは、音速の５倍（マッハ５）を超える速度で、変則的な軌道で飛行するという特徴を持つ。
現在のミサイル防衛では、探知や迎撃が難しいとされ、軍事バランスを一変させる「ゲーム・チェンジャー」と呼ばれる。

中国は２０１９年１０月、北京で行った建国７０年の軍事パレードで極超音速ミサイル「東風（ＤＦ）１７」を初披露した。

ウクライナ侵略を続けるロシアは、航空機から発射する極超音速ミサイル「キンジャル」を実戦使用した。
北朝鮮も２１年９月、極超音速ミサイルの初の発射実験に踏み切った。

軍事ジャーナリストの世良光弘氏は「単純な放物線を描く弾道ミサイルと異なり、極超音速で飛翔するうえ、
上昇下降など不規則に軌道を変える極超音速兵器の迎撃は困難だ。
海上自衛隊の新型ミサイル『ＳＭ６』でも、着弾直前に迎撃できる可能性があるだけで、失敗すれば着弾を許すことになる。
ウクライナで地対空ミサイルシステム『パトリオット』が、キンジャルを迎撃したというニュースがあったが、
軌道の変化が少なかったり、偶然だった可能性も高い」と解説する。

こうした脅威について、日米両政府は今年１月の外務・防衛担当閣僚による安全保障協議委員会（２プラス２）で協議した。
将来的に、極超音速ミサイルを迎撃する装備の共同開発も視野に議論することで一致していた。

今週末の日米首脳会談で合意すれば、共同開発に進み出すわけだが、技術面やコスト面、開発時間などを考えた場合、
成功の現実味はあるのか。独裁専制国家の野望を阻止できるのか。

世良氏は「迎撃ミサイルを開発する場合、敵方のミサイル軌道の変化量に対処することになる。
技術開発を否定はしないが、長い年月と膨大な予算がかかる。
迎撃だけを考える発想では、これまでの『専守防衛』『防戦一方』と何ら変わらない。
国民の生命と財産を守るためには、日本も同様の極超音速兵器を保有し、反撃能力、抑止力で対抗するか、
地下シェルターを普及する方に予算をかけた方が現実的ではないか」と語った。

夕刊フジ　2023.8/14 15:30
https://www.zakzak.co.jp/article/20230814-TMVXKTXGL5KBFGDD3EWITDC4SA/